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EMC Quest株式会社会長兼代表取締役 ウィリアム リードさん
VOL39   2014.09


巻頭インタビュー




『株式会社つくるひと』代表取締役


『デキル。株式会社』代表取締役





小野 ゆうこ

 さん



人と人とのコミュニケーションに、


素晴らしい『革新』を届けたい。





ひとことでは、伝えきれない仕事をしています。

小野さんは2つの会社を経営されていますが、それぞれの事業活動はどのようなものなのですか。 ○○○○○

 『株式会社つくるひと』と『デキル。株式会社』という会社を経営しています(以下『つくるひと』『デキル。』)。ただ事業形態は「○○屋さんです」と、ひとことでは伝えきれないんです。

 あえて表現すると『ブランドコンサルタント』、『イノベーションコンサルタント』になります。でも、そう言うと得体の知れない感じになってしまうんですよね(笑)。

「難しそうな仕事」というイメージがありますね。

 仕事内容をわかりやすくご説明すると「お客様の仕事に関する問題点を正しく見つけて、それを改善するために必要なものを選び、それを導入していく役割」を担うことです。お客様に「なるほどそうすれば自分たちの問題はスッキリするね」と思っていただくことを提案し、カタチにしていきます。

 例えば、WEBサイトやシステム、事業コンセプトの開発など、顧客ニーズに応じてさまざまなことに取り組んでいます。

つまり「お客様の仕事における問題を解決し、さらに価値を生み出すお手伝い」という仕事ですね。そのような仕事を、事業として成長させてきた経緯をお聞かせください。

 『つくるひと』が2006年の創業で、『デキル。』は今年2014年の創業です。もともとは『つくるひと』を創業する前に、個人事業主として仕事をしていましたが、お客様から「会社でのおつきあいを増やしたいので、ぜひ会社を法人化してほしい」とご要望があり起業しました。

 法人化の件だけでなく、私の仕事はこれまでお客様の様々なご要望に応えることで、次から次へと新しい事業展開を継続してこれています。

そもそも、何から仕事を始められたのですか。

 もともとは日本大学の大学院まで行って芸術学の勉強をしていたんです。その過程の中で「斬新なアイデアっていうのは、思いついた瞬間は斬新で高い価値があるかも知れないけれど、市場に出され浸透するとそれが当たり前の価値観になっていくっていう矛盾がある」と思ったんです。

 そして、それは芸術だけでなく、マーケットの中でも起こっている。そう考えるとマーケットに凄く興味が湧いて、私自身が頭でっかちになって学んで来たものを経済活動の中で試したいと思いました。そして「経済活動自体を芸術にしたい」っていう気持ちを持って社会に出ることを選んだんです。

 でも当時はバブル景気が弾けた後で、大学院卒の小生意気な女子を就職させてくれるところはほとんど無く、パソコン雑誌の編集部のアルバイトがスタートでした。

それは意外性のあるスタートですね。

 雑誌社での情報に触れることで、編集作業よりゲームコンテンツなどの企画を考える楽しさに目覚め、今度はCD-ROMコンテンツの制作会社に就職しました。

 そこで当時、隆盛傾向だったゲームコンテンツの開発やTV番組用のCD-ROM化、創成期だったウェブを使ったプロモーション施策などに携わり「ジャンルを選ばない、だけど何か価値をつくり出す」という貴重な経験を踏ませてもらったんです。また、ディレクション能力というものもその時に身に付いていきました。

 その後、お客様から「独立したらどうですか」というお話があり、個人事業主としての屋号だけで会社を始めたんです。

 すると独立を勧めてくれたお客様から、インターネットのコーポレートサイトの仕事をいただき、なんとか一生懸命にやっているうちに評価をいただくようになったんです。特に今の事業につながる『ブランディング』や『マーケティング』という仕事で認められはじめました。

 気がついたときには、某大手外資系企業の日本支社がお客様向けに出している消費者向けサイトの全てをディレクションする立場になっていました。

多様性ある仕事の取り組みは、現在の事業につながっているのですか。

 もちろんです。前述した某外資系企業のアメリカ本社が1年に1回、各支社の取組みをプレゼンする大会を行うのですが、私のディレクションしたサイトが選ばれ、そのマーケティングチームが授賞に至りました。

 お客様同士の知識交換を促すコミュニケーションツールの開発では、その取組みがアメリカ本社で再び認められました。

 これらのプロジェクトマネジメントで使っていたチームの意識統一のツールが、現在「株式会社つくるひと」の開発商品『88の質問』のベースであったり、『ブランドの構築ステップ』へと昇華されています。

社会のスタートから、起業のステップアップのストーリーは、なんだか『わらしべ長者』みたいな話ですね(笑)。

 お客様からのご要望に応え続けて行くと、それを見た人が「これはできる?あれはどう?」と次の仕事へ導いてくださったという感じです。

 信頼していただいたからにはそれに応えるために目の前のことには誠実に向かい、きちんとやり遂げるということ、さらにお客様の想像以上のことをするということを大事にしています。


堅くなった頭を柔らかくほぐし、新しい発想の種をみつける。

現在、経営されている会社は何人の方で運営されているのですか。

 『つくるひと』は4人で、企画やシステムをつくるスタッフで構成しています。

『デキル。』は5人でスタートしました。

少数精鋭で多くの企業の『ブランドコンサルタント』や、『イノベーションコンサルタント』を担っているわけですね。

 今まで多くの企業様の業務に携わらせていただいて感じたのですが『ファシリテーター』がいる現場と、いない現場では問題解決の設定も違うし、解決のスピードも全然違うんですよ。

『ファシリテーター』という言葉は、なじみのない言葉ですね。どういう役割を担う存在なのですか。

 ファシリテーターとは「促進させる役割の人」という意味の言葉です。例えばグループで実習する際に、チームをまとめながらみんなで協力したり、お互いに学びあう場を作るための役割を担います。

 ビジネス会議では、通常、声の大きな人や会議を仕切るのが得意な人が議長を務めて会議を一方的に進めがちですが、議長よりも、より中立的で円滑に進行を支援するファシリテーターが会議を運営すると、会議参加者が主体的になり効率的に意見を出し合って、納得のいく結論をスムーズに出すことができると言われています。

 ファシリテーターは議事の場でそういう役割を果たす人のことを言います。まだまだ一般的に認知はされていませんが、こういうシステムをビジネスの現場で役立てられれば、事業はより活気づくと思いますね。

そうですね。しかし、なかなか身近にファシリテーターがいないというのも事実です。

 おっしゃるとおりです。ですから私たちは、誰でも効果的なファシリテーションができるようにしたいと考えて『イノベーションカード』という、対話をデザインできるカードを開発しました。

それはどういったカードなのでしょう。

 ひとことで言うと「アイデアや企画を出しやすくする道具」ですね。「柔らかアタマで、らくらく新発想!新発見!」というキャッチフレーズもつけました(笑)。

 カードは紫、青、黄、オレンジ、緑、赤の6種類に色分けされ、カテゴリーごとに役目があります。そしてカードに書かれた質問に答えていくことで、課題に対し、出すべき答えを効率的に導いていくんです。ひとりでも、チームでも使えて、硬直した会議にブレイクスルーの種を見つけだし、革新的な発想にたどり着けるツールですね。

 長引いたり、無駄に回数を重ねている会議、口論に発展する会議の多くは思考が固まって停滞しているんです。『イノベーションカード』は、そういう時に頭をほぐして、新たな発見や発想を促すファシリテーターの役割を支援するツール(道具)です。

興味深いツールですね。このイノベーションカードを創ろうと考えた背景をお教えください。

 人の思考の流れは、それぞれにクセというか、大体同じパターンによって推移していきます。しかし、そのクセがあるから、ひとたび思考の袋小路に入ると問題解決に至らないんです。この現実は、会社、特に中小企業規模だと、それだけで経営に係わるような問題になってしまうと思いました。

 ですから、会議においてファシリテーターがいなくとも「思考の流れのパターンを強制的に変えていく」ことができれば、新しい発見ができたり、問題解決に近づけられると考え、このカードを開発しました。

 製品化する前にプレテストを何度か行いましたが、短時間で問題解決の仮説が立てられるし、いろんな異業種の人に集まってもらって、初対面の人達同士で架空のテーマで行っても30分あれば仮説が3本.5本程度立てられましたので、ツールとして有効と判断し商品化したんです。

『イノベーションカード』は、御社で販売されているのですか。

 カードの販売とファシリテーターの養成やファシリテーターの派遣を『デキル。』がしています。そして、これを使ったファシリテーションをしたいという方に、有効なカード活用法を伝える活動も行っています。

 最終的な目標として、そういう活動をさらに広く、深く行うことで、多くの企業の様々な問題解決の場にこのイノベーションカードを使ってサポートしたり、問題解決のお手伝いがしたいですね。

さて、このカードの有効性もさることながら、デザインが非常にユニークで素敵ですね。やはり芸術学を学んでいらっしゃった小野さんが考案されたのですか。

 いいえ。『デキル。』のチームのメンバーがもとになる素案を作り、それをデザイナーの方に発注してブラッシュアップして仕上げました。ただ最終形にたどり着くまで、とても苦労しました。

 カードのデザインは単純かつ、どんな世代に対してもわかりやすさが求められます。また、アイコン的な表現は世界販売を想定していましたから『グローバルデザイン』っていうものをかなり意識しましたね。

グローバル環境での活用として、すでに台湾やハワイでも、イノベーションカード関連の活動を行ったそうですね。

 台湾の高雄市にある東方設計学院という大学で、大学生と大学院生が混在している26人程度の小クラスで試験的な授業を行いました。思考の要素やフローに関する基本的なレクチャーとイノベーションカードを使ったセルフコンサルティングのやり方について説明し、その後グループに分かれて「高雄市を代表するお土産物の開発」という共通のテーマでコンセプトを短時間でつくりあげてもらいました。

 最初はもっと戸惑うかと思ったんですが、学生もすぐ使い方を理解し活用できて、反響はとても良かったですね。大学も授業の中でイノベーションカードを導入してくれることになりました。

 ハワイには、異文化マネージメントのコンサルタントを行っている元ハワイ大学の先生に、このカードの内容とデザインが人種的に分からない人がいないかをチェックしていただくために伺いました。そして、その先生に私たちが『イノベーションデザイン協会』というものを立ち上げようとしている主旨を話したところ、そのボードメンバーになってくださることになりました。

 さらに、その先生は世界の名だたる企業のコンサルを25年間で300社も行ってこられた実績をお持ちなのですが、そのノウハウを私たちと共有してくださることになったんです。

それは素晴らしい成果ですね。


次の世代を担う子どもたちに持ってほしいスキル。

多岐にわたって活動され、広い視野をお持ちの小野さんが、今思い描くこれからの事業展開をお聞かせください。

 まずはイノベーションカードを世界に広げたいと考えています。具体的にはイノベーションデザイン協会を国際的な協会として立ち上げ、その運営と活動を日本を中心にして世界展開していけたら良いなと思っています。そして夢として、この世界から戦争.をなくしたいですね。

それは凄い目標ですね。しかし、カードで戦争をなくせるのですか。

 戦争とは人と人との紛争です。だから、その紛争はファシリテーションのツールを使って改善することができると思うんです。人間が抱えている問題は、基本的に人間同士の紛争ですからね。大きな規模では国家間の紛争だし、小さい規模でいうと兄弟喧嘩や親子喧嘩、夫婦喧嘩です。これらは、何も足がかりがない中で討論し、紛争化に発展するんです。

 『イノベーションカード』は、人と人の間に対話を成立させ、頭を柔らかくほぐし、新しい発想で問題解決の糸口をつかむことができるので、人が介在するどんな紛争解決にも有効だと思っています。

本紙をお配りするのは、弊社が管理を受託しているマンションにお住まいの方です。そして、マンションには管理組合や理事会があり、常日頃から会合が持たれています。イノベーションカードはそのような会議やマンション管理の業務で使えると思いますか。

 理事会などの会議の時に、発言の仕方がわからず静まり返ったり、いつも決まった人しか発言せず、結局いつも通りのパターンで答えが決まることが多いなら、お試しいただくと有効かも知れませんね。きっと新しい解答が導き出せると思いますから。

 また、マンションに住んでいる子どもたちのサークルなどがあれば、そういう場面で使っていただけると効果的だと思います。

子どもたちを含めて、教育関係の方がこのカードを活用するとファシリテーション能力が子どもの頃から身に付いて良いかも知れませんね。

 そうなんです。例えば「前提条件が違う人たちが集まっている中で、最良の解決策を見つけ出す」には、ファシリテーション能力がとても大切です。

 次の世代を担う今の中学生、小学生の子どもたちは、きっと将来、異文化の人たちと交流や商売を重ねる必要性に迫られる環境を迎えると思います。だからこそ、このスキルを是非身につけてもらいたいんです。そうすれば、きっと日本人は世界の中でさらに活躍できるようになると思います。

おっしゃるとおりですね。グローバルでいて、繊細な考えをお持ちの小野さん。その将来を見据えた発想は深く感じるものがありました。 本日はご多忙の中、貴重なお話を本当にありがとうございました。



EMC Quest株式会社会長兼代表取締役 ウィリアム リードさん

〜PROFILE〜

(おの ゆうこ)
『株式会社つくるひと』代表取締役、『デキル。株式会社』代表取締役
日本大学大学院藝術学研究科修士課程修了。
企画コンテンツ制作会社で1年間のサラリーマン経験後、2006年、株式会社つくるひとを創業。
2013年、デキル。株式会社創業。
オリジナル思考ツールを使った問題解決力が認められ、商品、サービス、事業開発、業務プロセスの改善現場に入る。
考え方の仕組みを整えることで、変革が起きるプロジェクト現場を創業以来550以上経験。
「考え方を変えれば世界が変わる」をあらゆる仕事の軸としている。
International Forum of Visual Practitioners 会員

株式会社つくるひと
http://www.biztool.jp
デキル。株式会社
http://www.dekir.co.jp

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