アサーティブコミュニケーション
マンション生活のコミュニケーション術

日々のマンション生活で問題が起きたとき、どうしていますか。管理組合や管理会社に相談することもできますが、ちょっとした問題については当事者同士で丁寧に話し合いをして解決できるようにもなりたいものです。

今回は、マンションでの人間関係で、よりよい人間関係を作るコミュニケーションのヒントをご紹介していきます。

〈第18回〉

6名で理事会を構成しています。 中には活発・積極的に意見を言う人もいますが、全く無関心で理事会もさぼりがちな人が約半数の3名います。 やる気のない人も輪番制なので理事になってもらうしかないのですが、よりよい理事会にしていくために、コミュニケーションの取り方で何か工夫はできますか。

 

 理事会の会議に参加される方が、必ずしも積極的でないことは、よくあることですよね。役員になるかどうかは、それぞれの事情や考えがあると思いますので、すべての人に積極的な参加を強制することはできません。

 とはいえ、せっかくの話し合いの時間、皆さん忙しい中集まっていただいていますので、効果的に使いたいもの。声の大きい人だけの意見ではなく、理事会のメンバー全員に気持ち良く参加してもらいたいというお気持ちもよくわかります。

 やる気のない人が、どうすれば会議に積極的に参加してくれるかは難しい課題ですが、いくつかできることはありそうです。

 一つは、「参加すべきだ」「発言すべきだ」というスタンスではなく、「〇〇の問題を解決したいので協力をお願いしたい」というスタンスで関わること。 「〇〇すべきだ」のスタンスは無言の圧力となってしまい、結果としてモチベーションの低い人たちの気持ちを更にそいでしまいます。積極的な人が正しくてそうではない人はダメな人、という空気があると、消極的な人はますます引いてしまうのです。

 もう一つは、参加しやすい、発言しやすい質問の仕方を工夫することです。

 会議での質問としてよくあるのが、「皆さん、どう思いますか」「何かご意見はありませんか」という、オープンな質問です。これは消極的な人にとっては、何か立派な意見を言わなければならないと感じてしまい、意見を出しづらくなってしまいます。

 そうではなくて、「〇〇の期限について、××がよいでしょうか、それとも△△がよいでしょうか。どちらか挙手をお願いできませんか」と、二択、又は三択の質問にすると意見が出やすくなります。手があがったら、「よろしければ理由を一つ、教えていただけますか」と、答えやすい質問をするのです。理由を一つ、ということであれば、答えやすくなりますので、皆さんの意見が出やすくなるでしょう。

 その上で、「〇〇と××、△△という3つの意見が出ています。それぞれのメリットデメリットを書きだしてみましょうか」と白板に記載し、複数の選択肢から選ぶのも良いかもしれません。誰が出した意見も大切であり、出された意見はどれも平等に扱う、そんな工夫をすることで、意見が出やすい会議の場になっていくかもしれませんね。

 




〈第17回〉

数人の理事で理事会を運営しています。 その中にいわゆる「声の大きい人」がいて、自分の意見を強引に押し通そうとします。 強い口調で言われるので、他の人が気おくれしてしまい、反対意見が出せない雰囲気になるのです。 何か良い方法はないでしょうか。

 

 議論のやり取りの対応の仕方で、工夫できることはいくつかあります。一つは、声が大きい人がいたとしても、ニュートラルに振る舞うことです。嫌な人だと思って身構えたり、怖いと思って怯えることは、相手に微妙に伝わって返って相手の反撃を引きだしかねません。怖い人の前で怯えることは、実は逆効果なのですね。

 たとえ意見を強引に出す人がいても、「言い方のクセだよね」くらいに軽く受け止めて、自分自身は落ち着いた態度をとるのが第一です。

 皆がもっと闊達に意見を出しあって、理事会をより良い方向に運営していきたいからこそ、自分の意見を伝えるのですよね。であれば、私たち自身が率直な姿勢で話すことを第一として、反論する際には伝え方を工夫してみてください。

 反論の仕方として、次の3つのステップを覚えておくと役に立ちます。

 @肯定的に始める
 「なるほど、〇〇さんの××のご意見も、確かに一理ありますね」
 どんな時も、肯定的に始めます。いきなり「そんなことを言っても」と反論から始めると、声の大きな人の声はますます大きくなってしまいますので、気をつけましょう。

 A提案型で伝える
 その上で、自分はどのように考えるか、提案型で伝えます。相手を説得しようと思って反論するのはご法度。また、「他の人もそうだ」ではなく、「自分はこう思う」という、自分の見解を提案型で伝えます。
 「私自身は、現状では〇〇の問題があって住民の方に徹底するとは思わないので、△△というやり方もあるのではないかと思っています」

 Bオープンに終わらせる
 そして、他の人に意見を振ってみましょう。その際も、選択肢を示すという形にします。

 「その他の方はいかがでしょうか、多様な意見を出して検討したいので、何かありましたらコメントをぜひお願いします」

 どんな時も落ち着いて主張できれば、話し合いは建設的な方向に進んで行くはずです。一人ひとりが誠実に率直に振る舞うことで、会議のトーンも変わってくるでしょう。

 




〈第16回〉

子どもの泣き声やドタバタと室内を走る音が聞こえます。 子どもだけに仕方がないと思うのですが、やはり騒音はつらいものです。 ご近所さんなので注意をしたら、仲が悪くならないか心配です。

 

 こちらが不快な思いをしていることを、相手に気持ちよく理解してもらうことは、ハードルの高い伝え方の一つです。

 ご近所間のトラブルの原因のほとんどは、ネガティブなことについて言わずに我慢した結果の関係悪化、あるいは怒鳴り込んだり文句を一方的に言ったりというモノの言い方に起因すると言っても過言ではありません。

 実は人は、「何を言われたか」よりも「どう言われたか」の方に敏感に反応します。言い方いかんによっては、関係悪化にも関係改善にもなるのです。

 よくやってしまうNGの伝え方としては、「迷惑です、わからないんですか!」と頭ごなしに文句を言うことです。これはご近所さんとの関係を悪化させることが目に見えていますよね。それを怖れるあまりに「仕方ない、子どもだし…」と我慢するとどうなるでしょう。飲み込んだ気持ちは必ず外に出ますので、だんだん怒りがたまっていき、ついには爆発させてしまうか、顔を見るのも嫌になるでしょう。他のご近所さんを巻き込んで、その家族を孤立させるなどの陰湿なやり方もありますが、どれをとっても解決には至りません。

 騒音という問題を解決することと、人間関係をよくすることと、両方を目指してコミュニケーションを取るためには、どんな工夫ができるでしょうか。

 一つはこころの中のアプローチです。悪いのは相手だという罰してやるモード.は決してうまくいきません。そうではなくて、自分はとても困っている.というこちらの事情を丁寧に説明するつもりで、誠実に話しかけましょう。

 「申し訳ないのですが、実は困っておりまして」という形で、誠実に率直に切り出します。

 その上で、なるべく問題を具体的に伝えて改善を求めます。24時間すべての音を止めてもらいたいとなると、なかなか同意をもらえませんが、「夜9時以降の足音については、なるべく控えていただけないでしょうか」と、限定的にお願いすれば、相手も理解して行動しやすくなるでしょう。

 お互い様.の気持ちを前提として、できること.に絞って提案することで、気持ちよくわかってもらえることもあるのです。

 




〈第15回〉

マンション生活での人間関係の基本は何といっても「挨拶」。 とはいえ、挨拶をマナーとして考えている人もいれば、そうでない人もいます。 どうしたらよいのでしょうか。

 

 分譲と賃貸の混合のマンションでは、マンションに対する思いが違うためか、騒音やゴミ出しのマナーなどの問題で摩擦が起きたり、日頃のつきあい方が難しいと感じたりすることがあるようです。例えば挨拶一つ取りあげてみても、挨拶はマナーの一つだと考えている人もいれば、挨拶するのが面倒くさいからこそマンションを選んだ、という人もいるようです。

 こっちが挨拶しているのに、目をそらされたり無視されたりすると、「せっかく挨拶しているのに、どうして」と考えて、相手のことが疎ましくなってしまいます。反対に、こちらは静かに生活したいと思っているのに毎日のように挨拶されると、強要されているようで居心地が悪いと感じる人もいるのです。

 同じマンションの住人とはいえ、生活習慣も考え方、人間づきあいの価値観も異なる他人同士。ストレスを抱えないためには、どんな心構えでいるとよいのでしょうか。

 私自身は二つのことを考えて生活しています。

 一つは、人は一人ひとり違う(当たり前ですが)、それぞれが異なる価値観を持ち、相手は必ずしも自分と同じ価値観ではないということを、肝に銘じること。相手が自分と異なる価値観を持っていることは、なんら間違っているわけでもありません。「挨拶する」ことがルールでない限り、相手に強要することはできませんし、ルールになるとむしろ生活自体が息苦しくなってしまいます。

 もう一つは、相手がどうであれ、自分はどうしたいかを決めておく、ということです。

 自分はご近所づきあいをどうしたいのか、日々の人間関係で何に価値を置いて生活をしたいのか。相手がどうであれ、「自分は」挨拶をしよう、それが自分だから、と思えば、相手に振り回されずにストレスも少なくなります。あるいは、相手がちゃんと挨拶する人ならするし、会釈だけの人ならこちらも会釈、など、挨拶のレベルをいくつか持って使い分けるということも、気持ち的に楽かもしれません。

 いずれにしても、どうすることが自分にとって納得がいくのかを決めて関わり方を考えること。たかが挨拶、されど挨拶。一度時間をとって自分に問いかけてみるもの良いかもしれませんね。

 




〈第14回〉

生活習慣も家庭の事情も価値観も異なるマンションの人たちと話すとき、言われたことに感情的になることがあるのですが、どうしたらいいのでしょうか。

 

 こちらは気にしていなくても、相手にとっては問題だと感じることは、生活習慣も家庭の事情も異なる他人同士であれば、当然起こるものです。当事者同士で話し合おうとすると、つい「自分は正しい」「この人はダメだ」などの、価値観の上下で図ってしまい、その結果人間関係がこじれてしまうということがあるでしょう。

 相手の言葉に自分が感情的にならないためには、何に気をつければよいのでしょうか。

 次の2つのポイントを忘れないでいると、相手の感情の勢いにのまれてしまうことなく、対応することができるようになります。

 @相手の「気持ち」を受け止める

 A「事実」の確認と「解決策」を考える

 例えば、子どもたちがマンションの専用庭で遊んでいることに対して、文句を言われた時です。こちらとしてはそれほど迷惑をかけてはいなかったと思っていたのですが、あるとき突然お隣さんに声をかけられました。

 「ちょっと、お宅のお子さんですが、庭で騒いでいてうるさいですよ」

 そんな時には、感情的に反論ないで、相手の言い分をシンプルにくり返します。

 「申し訳ありませんでした。うるさくて、ご迷惑をおかけしたということですね」

 その上で、事実確認をして解決策を考えます。

 「気づいていなかったのですが、うるさかったのは、いつのことでしょうか。教えていただけますか」

 「この前の土曜日の朝だよ。午前中から大声を出されたら困るじゃない」

 午前中が問題であるとわかれば、こちらの対応の仕方も考えることができますね。

 終わりはさわやかに伝えましょう。

 「今後は気をつけます。ご指摘ありがとうございました。また何かありましたら、何でもおっしゃってください」

 最初のハードルを越えることができれば、次回から対話はぐっと楽になるでしょう。難しい対応ですが、一度チャレンジしてみるとよいかもしれません。

 




〈第13回〉

マンション管理組合の理事の方などが伝え方で悩むことの中に、「注意すること」があります。どのようなことに気をつけて伝えたらよいのでしょうか。

 

 マンションの規約で、共用部にものを置くことは禁止されているのですが、生協などの配達の返却箱を共用廊下に置いている人がいます。「規約で禁止されているのに」と思いつつも、禁止すると生協利用者が困ってしまうと思い、見て見ぬ振りをしているというマンション管理組合の理事の方。マンションの規約についての注意を、一体どのように伝えたらよいのでしょうか。

 たとえ事実であっても、開口一番、「これはルール違反ですよ」「迷惑です」と言えば、相手との関係が悪化すること必須です。「お宅の〇〇ですが、皆が困っているんですよ」と、「皆」を引き合いにして注意するのもNGです。言いづらいからといってメモを残したり、回覧板で伝えたりするのも、あまり効果はありません。

 大事なことは、やはりフェイス・トゥ・フェイス。

 言いづらいことであればあるほど、ヒューマン(人間的).であることが大事になります。こちらの誠実さや、率直さ、相手への思いやり、そして本当に困っている.という気持ちが、相手の心を動かすのです。

 伝える時は深呼吸し、相手の顔を見ながら、落ち着いて始めましょう。

 始める前に、いくつか覚えておくとよいことがあります。

 相手にも何かの事情があるのだろうということを、忘れないこと。

 そして、注意するこちらもつらいが、注意される側はもっとつらいことだろうと考えること。

 実際の伝えるステップは、3段階です。肯定で始めて、注意して、肯定で終わらせる。あまり感情を交えず、事務的に、ストレートに、伝える。これが原則です。

 〈ステップ1〉いつもお世話になっています。

 〈ステップ2〉実は困っていることがありまして、△△さんに、○○についてご協力をお願いできないかと思っています。

 〈ステップ3〉できる形で結構です。ぜひ、よろしくお願いします。

 こんな形で、シンプルに、率直に伝えてみましょう。自分の誠実さを軸にして、相手のことも尊重しながら、向き合って丁寧に伝えれば、きっと相手の協力を得ることができやすくなるでしょう。理事の皆さん、がんばってくださいね。

 




〈第12回〉

お隣さんとのおつき合いにも幅があります。社交的な人もいればそうでない人もいる中で、どれくらいの距離感をもっておつき合いをすればよいのでしょうか。

 

 同じマンション内のお隣さんやご近所さんとの、人間関係の距離の取り方に迷うことはないでしょうか。距離感なくおつき合いをすることが好きな人もいれば、むしろ距離を置いて生活したいという人もいます。

 お互いよく知っていれば、多少コミュニケーションが取れていなくても、なんとなく態度から察したり、雰囲気から慮ったりなど、言葉の裏にあるものを理解することができるのですが、知らない間柄の場合は、態度のみで察しようとすると、かえってトラブルになることがあります。

 気をつけておきたいことは何でしょうか。

 一つは、「自分(たち)はどのようなお付き合いをしたいのか」を決めることです。家庭はプライベートな空間と考えて、基本的にはお隣さんと距離を置きたいのでしょうか。多少はおしゃべりできる人間関係を持ちたいのでしょうか。それとも、おつき合いは立ち話だけなのでしょうか。「ありたい自分(たち)」のイメージを、まずは考えてみることをお勧めします。

 「自分が望む関係は何か」の軸がしっかりしていれば、相手の態度に振り回されたり、「あの人が〇〇だから」と心の中で腹を立てたりすることが減ってきます。相手がどうであれ、自分がどうしたいかがはっきりしていれば、大体のことは落ち着いて対処できるのです。

 ただ、自分の要望が明確でも、相手には相手の価値観があり、理解に至るには時間がかかることを忘れないようにしましょう。こちらが話しかけたくとも、相手が受け入れてくれるには、時間がかかります。反対に、相手が色々と話したい様子でも、自分たちが少し距離をおいておつき合いすれば、徐々に相手も理解してくれるようになります。何事も焦ることは、良い結果になりません。

 残るは、こちらの「ノー」の伝え方です。誘われたときの断り方、長い話の切り方、自分が我慢できる範囲を超えた騒音などについての注意の仕方については、また稿を改めてご紹介していきたいと思います。

 




〈第11回〉

ご近所さんに「ルール違反」を理解してもらいたい時、どのように伝えたらよいでしょうか。
今回は、「迷惑していることを伝える」言い方のヒントをご紹介します。

 

 分譲のマンションと賃貸の部屋が混在しているマンションの場合、分譲部分の居住者と、賃貸の居住者との間には意識の隔たりがあることがあります。マンション生活のルールを守ってほしいということを、意識の違う相手に、さわやかに伝えるにはどうすればよいのでしょうか。

 「タバコの吸い殻をエントランスで捨てるのは、やめてほしいんですけど」。顔を見るなりムッとして、そんな一方的な言い方になったことはありませんか。あるいは、言いづらいために、言葉を飲み込んでしまったことはないでしょうか。

 一方的に責めると、相手は反発し関係が悪化してしまいますし、言わないでいるとルールは形骸化してしまいます。理事会で決めて張り紙にしてもよいのですが、知りあいのご近所さんには、むしろその場でさわやかに伝えてみることも大切です。

 日本は、「何を言われたか」よりも、「誰に言われたか」の方が重視される社会。なので、「信頼できる人から言われた」という状況を作ることが、とても大事になるのです。

 信頼できる人だから話を聞こう、この人だったら協力しなければ、と思ってもらうためには、話しかけ方に工夫が必要です。

 言いづらいことを伝えるためには、話の切り出し方を工夫してみましょう。

 一つは、態度です。上目線にならないで、誠実にまっすぐ話しかけます。

 「こんにちは」とあいさつをしてから、自己紹介をします。「〇階に住んでいる△△です。いつもお世話になっています」。

 その上で、自分の気持ちを添えてさわやかに伝えます。

 くれぐれも「相手の間違いを正す」というのではなく、「協力をお願いする」スタンスで注意しましょう。

 「タバコのことなのですが、エントランスでお吸いになるのは控えていただけないでしょうか。共用の場所となりますので。申し訳ありませんが、よろしくお願いします」。

 どんな時でもマンション生活は「お互い様」。犯人捜しではなく、協力者を作るつもりで話しかけることで、少しずつ協力関係を築いていくことができるのではないでしょうか。

 




〈第10回〉

マンション生活のコミュニケーションには、情報を適切に伝達することと、お互いの気持ちを適切にやり取りすることが必要です。
今回は、「気持ち」について考えてみましょう。

 

 相手の話を聴くとき、あなたはどんなことに気をつけて聴いていますか。

 マンション生活でのおつき合いとして、意識したいものは二つあります。一つは「情報を正しく伝達すること」と、もう一つは「気持ちのよい関係を作ること」です。

 一つ目の情報伝達には、間違いのない確実でシンプルな事実の伝え方が必要となります。

 「〇月△日の19時から××にて総会があります」

 「停電は、本日15時〜16時30分までの間となります」

 こうした情報は確実に伝える必要がありますし、そのためのコミュニケーションツールとしては、文字情報が一番わかりやすく手っ取り早くなります。

 反対に、関係作りのためのコミュニケーションのカギは、「気持ち」です。とはいえ、「事柄」の説明はうまくできても、私たちは「気持ち」を適切に伝えることがあまり上手でありません。照れくさくなったり、気持ちを伝える言葉(語彙)を持たなかったりが大きな理由です。

 相手に対して共感の気持ちを伝えられれば、関係作りはぐっと楽になります。

 「荷物を運ぶのに腕が痛くなったよ」には、「それは本当に大変でしたね」

 「引っ越してきたばかりなのに水漏れがして…」には、「それはお困りだったでしょう」

 「外の騒音には本当に頭にくるよ」には、「そうですよね、腹が立ちますよね」

 そうしたちょっとした思いやりをもった「気持ちのやり取り」。マンション生活では、短い時間の会話のやりとりが多くなりますので、その場で上手に相手の気持ちや自分の気持ちを表現することを意識してみてくださいね。

 




〈第9回〉

マンション生活の原則は『あいさつ』。
やっぱりあいさつが原点ということで、今回はその重要性をもう一度考えてみたいと思います。

 

 私は仕事柄、様々な会社の研修にお伺いする機会があります。

 そこでいつも気になるのは、従業員の方々のあいさつです。訪問者の私に、従業員の方々がきちんとあいさつをしてくださる会社は、社内のコミュニケーションがうまくいっている場合が多いと感じます。反対に、従業員同士であいさつもなく、目も合わせないという会社は、内部で深刻な人間関係の課題や業務上の問題を抱えているケースがよくあります。

 あいさつは、職場のコミュニケーションの基本であり、人間関係の土台ですね。

 様々な価値観や考え方の人間が、一緒に暮らしているマンション。ご近所さんとの人間関係の重要性を痛感したのは、3年前の東日本大震災の時でした。

 震災後しばらくの間、ご近所さんと言葉を交わしたことが心の支えとなりました。

 「大丈夫ですか」「怖かったですね」「心配なことはないですか」。震災の後、数週間にわたり、顔を見るたびに声をかけあったことで、不安な状況を回避できたと思います。

 あいさつには、様々な意味があります。

 一つは、助け合いや生存の確認のベースとなること。「最近顔を見ないね」「困っているようなので、声をかけてみようかな」と、日頃の関係が作れていることが、いざという時の大事なライフラインとなります。

 もう一つは、犯罪の防止です。仮に不審者がいたときも、あいさつされると変な行動を取ることが難しくなります。子どもに対しては、教育上の効果もあります。

 中でもぜひ意識しておきたいのが、管理人さん、清掃をしてくれるメンテナンスの業者さんとの積極的なあいさつです。「いつもお世話になっています」「ありがとうございます」「よろしくお願いします」などの声かけが、気持ちのよい住居空間を作っていくはずです。

 たかがあいさつ、されどあいさつ。今日も意識して、言葉をかけあってみませんか。

 




〈第8回〉

最近は「ねぎらいの言葉」が少なくなってきたようです。
マンション生活の「お互い様」を支えるのは、思いやりの言葉。今回はねぎらいの言葉をかけることです。

 

 お互いに対する思いやりを示す言葉として最近少なくなってきたのが、「ねぎらいの言葉」ではないでしょうか。

 「ねぎらう」とは、相手の苦労や大変なことに対して、感謝やいたわりの言葉をかけることです。 エレベーターを待っている時に、会話がないままじっと黙っているのもなんとなく居心地が悪い時、ねぎらいの言葉はお互いの関係をスムーズにする潤滑油となります。 目を合わせて特別な会話をする必要はありません。ねぎらいの言葉をかけることで、相手は「話しかけやすい人だな」「気持ちのいい人だな」と思って、ホッとすることでしょう。

 ねぎらいの言葉の題材として、一番よく使われるのが天候ではないでしょうか。 今年の夏は大変暑い日が続きましたので、エレベーターを待っている間、あるいは中にいる時でも、「今日は本当に暑かったですね」「こう暑いと体調管理が大変ですよね」などと、声をかけたりかけられたりすることがたくさんありました。

 そうすると、「本当にそうですよね」「いやあ、こう暑いとね…」など、必ず返事が返ってきます。

 その他にも「冬の寒さが厳しい日」「台風や大雪などで交通機関が乱れた時」なども、「こんにちは」とあいさつをした後に、「この大雪では歩きづらいですね」「風が強くて大変でしたね」と一言声をかけると、場がふっとなごみます。 相手がエレベーターを降りる時には、「お気をつけて」など、さらりと声をかけるのもよいでしょう。

 仕事も家庭の事情も全く違う他人同士ではありますが、同じ空間を気持ちよく過ごしたいという思いは同じのはず。 ストレスの高い現代に生きるからこそ、お互いへの思いやりを忘れないでいたいものです。

 お互いの違いに敬意を払いつつ、ちょっとした声掛けをしながら、住みやすい空間を作っていきたいですね。

 




〈第7回〉

マンション生活では、迷惑をかけたり、かけられたりの「お互い様」が基本。
でも、自分が明らかに迷惑をかけてしまった時、どんなふうに伝えたらいいでしょうか。

 

 布団を干そうとベランダに出たところ、布団ばさみが手を離れて下の階のベランダに、大きな音を立てて落ちてしまいました…。実はこれ、私自身が先日、実際にやってしまったことです。

 その他にも、夜中に大きな音が出ることがあった(私の場合は夜中に警報機の誤作動がありました(涙))、水が下の階に漏れてしまった、など、生活の中で起こる出来事でご近所さんに迷惑をかけてしまうことは、避けられないことですよね。

 そんなときのコミュニケーションの原則は、「迅速さ」と「誠実さ」の2つです。

 具体的な迷惑となる出来事そのものの解決も大切ですが、それに伴う「気持ちの問題」の解決が、実は「お互い様」を支える土台となります。

 問題の解決は、できる限り迅速に対応します。その日のうちに、直接対面してお詫びに行きましょう。可能であれば、ちょっとした手土産があるといいですね。私は、実家から届いていた桃を数個もって、お詫びに行きました。

 お詫びは、電話ではなく、「顔を見て」が原則です。人は、相手を知っていれば、許す気持ちになるもの。ご近所さんの顔を見て、頭を下げて、「申し訳ありませんでした。今後はこのようなことのないように気をつけます」と伝えるだけで、「気持ちの問題」はずいぶん和らぐでしょう。

 もう一点「誠実さ」は、態度でしっかりと表します。こちらの誠意は、声のトーンに現れるといいます。実際に行く前に、「申し訳ありませんでした」の一言を、鏡の前で練習してみるのも良いかもしれません。こちらに誠意があるかどうかは相手はすぐに見抜きますので、誠意が伝わるように、心を込めて伝えてみましょう。

 その上で、「また何かありましたら、遠慮なくおっしゃって下さいね」の一言をつけ加えることで、今後も何かあった時にも声をかけやすくなるでしょう。

 




〈第6回〉

ご近所さんの長話。
自分が急いでいる時に、お話し好きのご近所さんの話をどのように切りあげることができるのでしょうか。

 

 ご近所さんとのちょっとした世間話。時間があれば楽しい話も、時間がない時に相手の長話を切り上げるのは簡単ではありません。急いでいるからと、なんとなく雰囲気や態度で伝えることもできますが、お話好きな人につかまって.しまった時、相手をイヤな気持ちにさせることなく話を切り上げるのは簡単ではありません。

 そんな時も、言い方に気をつけることで、お互いさわやかに話を終わらせることができます。

 「嫌だな.」と思っていると、その気持ちは態度に現れてしまいます。逃げ腰になったり伏し目がちになったり。大事なのは逃げ腰.になるのではなく、こうしたときこそ相手ときちんと向き合うことです。話が始まる早い段階で、相手の顔を見ながら話をさえぎります。

 「〇〇さん、すみませんが、今よろしいですか」。向き合って相手と目を合わせ、はっきりと声を出して言ってみます。

 相手が話しかけてくるのは、自分に対して厚意があるから(悪意があるわけではない)ですので、その気持ちを理解した言葉を添えて自分の事情を簡潔に伝えます。

 「続きのお話もぜひ聞きたいのですが、今日はこれから〇〇に出かける用があって…」

 「先日の会議のことですね、大事なお話だとは承知しているのですが、実は今…」

 そのことで相手は、自分に対する否定ではなく、話をする時間がないのだと理解できるのです。

 相手の気持ちを尊重しつつも、自分の事情を誠実に率直に伝える。ちょっとした気づかいで、話の長い人とも上手におつき合いをしていくことができるでしょう。

 




〈第5回〉

ご近所さんから注意を受けたり文句を言われた時、どんな風に対応したらよいでしょうか。
今回は、痛い一言の受け止め方、についてご紹介しましょう。

 

 ご近所さんから痛い一言をもらった時、どんな対応をしたらよいのでしょうか。例えば「音がうるさい」「ゴミの出し方がダメだ」などの注意を受けたとき、どんな対応をしていますか。

 言われたことに思わずカチンと来て、「悪かったですね! でもね、お宅だって〇〇じゃないですか」と倍にして言い返してしまいますか。「すみません、すみません…」とひたすら頭を下げて恐縮し、「嫌われちゃった、自分はダメだ」と自分自身を責めますか。それとも、ムッとした顔で「申し訳ありません」と言いつつも、その後から目を合わせない、わざと無視するなど、密かに仕返ししてしまいますか。

 相手の痛い一言に、とっさに対処するのは簡単ではありません。頭が真っ白になったり胸がドキドキしたりして、うまい言葉が浮かんでこなくて対処は簡単ではありません。

 言い返して相手を責めても、ひたすら謝って自分を責めても、本当の問題解決にはつながりません。そんな時こそ、さわやかに、対等に、誠意をもった対応ができると、その後の関係が良くなって問題解決につながりやすくなります。

 すぐに言葉が出てこない場合は、まずは一呼吸置きましょう。「そうですか」「確かにそうですね」など、相手の言葉を受け止める一言をゆっくり伝えて「息を吐く」と、次の言葉が出やすくなります。

 その上で、「それは申し訳ありませんでした」と、相手の気持ちに対してお詫びの言葉を添えます。事実がどうかという議論になると、「どっちが正しい」と口論になりがちですが、むしろ、「嫌な思いをさせてしまった」ことに対して、気持ちを込めて「申し訳ありませんでした」と頭を下げます。相手の気持ちにきちんと応えるつもりで言葉にすると、相手の怒りは収まって、「じゃあ、どうしよう」と、次のステップに進みやすくなるのです。

 




〈第4回〉

お隣さんから何かいただいたとき。
「いらない」ということをどんな風に伝えたらよいのでしょうか。
ここでは上手な断り方についてです。

 

 おつき合いの中でも難易度が高いのが、「断り方」です。

 ご近所さんがお土産や手作りのクッキーやお惣菜など、ご厚意で「〇〇をどうぞ」と持ってきてくれたものを断りたいとき、どんな風に伝えていますか。

 

 「いりません、結構です」と一方的に断るのはさすがに角が立ちますので、「そんな…、悪いですから…」「いえいえ、そんな結構なものを…」と言って断ろうとすると、「遠慮なんてしないで、食べてくださいよ」なんて押し切られてしまいます。

 「明日から留守にするので…」と嘘をついて断ることもできますが、それも後味が悪いもの。嘘がばれたときには、関係は更にぎくしゃくしてしまいます。

 自分も相手も大切にしながら、アサーティブにお断りするためには、次の二つのことを念頭に置いて誠実にお断りの気持ちを伝えます。

 

 第一に、相手の気持ちを十二分に受け止めることです。

 「お心遣いありがとうございます」「お気持ちは本当に嬉しいです」と、相手の「あげたい」という気持ちを十分に受け取ります。人間関係では、そうした「気持ちのやり取り」が、実は一番重要なのです。

 

 第二に、断る対象は一体何なのかについて、ぎゅっと絞ることです。

 甘いものが苦手という好みの問題なのか、量が多いことが困るのか、使わないために無駄になることがもったいないのか、それを自分の中で明確にします。

 「お気持ちは嬉しいのですが、いただく量が多すぎて、私たち二人では食べきれないので、もったいないのです」

 その上で、代替案を出します。

 「甘いものは苦手なので、それ以外でしたら喜んでいただきます」など。

 

 誠実な気持ちを含んだ丁寧なやり取りが、人間関係をスムーズにしてくれるはずです。

 




〈第3回〉

言いづらいことを言うためには、日頃からよい関係を作っておくことが必要です。
そのための第一歩はポジティブなメッセージを伝えることです。

 

 「お隣さんのごみの出し方が問題」、「上の階の犬の吠え声(子どもの泣き声)がうるさい」など、言いづらいことをどんなふうに伝えたらいいのでしょうか、ということを、尋ねられることがよくあります。私の答えは、「難しいことを伝える前に、良いメッセージを伝えられる関係を作っておきましょう」ということです。「迷惑している」などのネガティブなメッセージを、関係のできていない相手にすると、相手も「どうして私に」とカチンとくるもの。コミュニケーション=人間関係と考えて、小さなことから積み重ねておきます。

 小さな問題は、早め早めにやっておきましょう。引っ越してきたときに、「小さな子どもがいますので」とあいさつに行く、隣や上下の人に「犬の吠え声で困ることはないですか」と自分から話を持ちかける。小さなメッセージを日ごろから積み重ねておくことで、大きな問題になった時に言いづらいことでも言える「関係」ができているのです。

 そのためのコミュニケーションの良い方法が、「ポジティブなメッセージを伝える」ことです。

 気づいたら、なるべく具体的に、シンプルに、さわやかに伝えてみます。

 「かわいいわんちゃんですね」「ステキなお花ですね」「暑い中お疲れ様です」など。

 問題が起こってから「この人はとんでもない人だ」という色眼鏡で見る前に、小さな声掛けをして人間関係の土台を作っておくのです。

 もちろん「言いづらいことをさらりと言う」というスキルもありますので、次回はちょっと難しい事例も取り上げて、伝え方について考えてみることにしましょう。

 




〈第2回〉

エレベーターの中や廊下でご近所さんと会った時、きちんと挨拶していますか。挨拶は人間関係の第一歩。都会の希薄な人間関係だからこそ、挨拶の工夫をしてみます。

 

 コミュニケーションは、言葉だけではありません。誠実な表情や態度、はきはきとしたものの言い方や声の調子、選んだ言葉の一つひとつで、相手に伝わるメッセージはがらりと変わってしまいます。どんなことに気をつけたらいいのでしょうか。

 「こんにちは」という挨拶を、ぶすっとした表情で伝えれば、「この人はぶっきらぼうな人だな」という印象を与えてしまいます。また、「ありがとうございます」を弱々しい声で伝えても、相手には届きません。

 日常の小さなことだからこそ、ちょっとした伝え方の工夫をしてみましょう。あなたの印象も伝わり方もずいぶん変わってきます。

 伝わり方で、一番大きなインパクトのあるものは、表情や態度です。

 顔を上げて相手の顔を見て微笑む。きちんとお辞儀をする。ささっと通り過ぎるのではなくて、ちょっと立ち止まる。エレベーターで降りるときに言葉かけを忘れないなど。

 次に大きなものは、声の調子やトーンです。

 ゆっくり、明瞭な声を出す。大事なのは「相手に届くこと」。「言えばいい」のではなく、コミュニケーションは届いて初めて成り立つものですから、「ちゃんと届いてね」と願いながら声を出してみます。

 そして、言葉の選び方。「どうも」、「すみません」と省略しないで、隣人だからこそ丁寧に言葉を選びます。「どうも、ご親切にありがとうございます」「いつも、お世話になっています」「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」などです。日常のことだからこそ、小さな挨拶の積み重ねをしていきたいものですね。

 




〈第1回〉

マンション生活につきものの、「〇〇に困る」ということ。
隣人に自分が困っていることを伝えるには、工夫が必要です。
今回は、ものの言い方のヒントです。

 

 隣の人がたてる音や物の置き場などに困っている時、「迷惑している」ことを、どんな風に伝えたらいいのでしょうか。

 どんなに正しいメッセージでも、「伝え方」を間違えると、相手は嫌な気持ちになります。集合住宅で大事なのは、「お互い様」というマインドを持つこと。その上で、気持ちのよいコミュニケーションをするために、伝え方を振り返ってみましょう。こんな風になってはいませんか。

 一つは「つい言いすぎてしまう」パターン。「ちょっと、迷惑なんですけど」と一方的に伝えてしまうものです。もう一つは「ただただ我慢する」パターン。どんなに嫌な思いがしても「仕方がないわよね、我慢するしかないわよね」と自分の気持ちを飲み込んでしまいます。

 最後に「嫌味な言い方をする」パターン。当の隣人が通りかかると、「まったく…、いつもよくあんな大きな音を立てられるわよね」と、聞こえよがしに嫌味をチクリ。どれもあまり上手な伝え方ではありません。

 一方的に相手を責めるのでも、ひたすら自分が我慢するのでもなく、「お互い様」の精神で相手も自分も大切にした伝え方。それを、「アサーティブなコミュニケーション」といいます。

 相手は悪者、自分は被害者、という思い込みは横に置いて、「こんな具体的な問題を解決したい」と、起きている問題について話し合ってみます。同時に、「お宅の〇〇に迷惑している」という言い方ではなく、「自分が〇〇で困っている」と自分の気持ちを誠実に伝えてみます。そんなちょっとした工夫で、伝わり方はぐっと変わってくるのです。

 



〜PROFILE〜

(もりた しおむ)
特定非営利活動法人アサーティブジャパン 代表理事岡山県生まれ。 一橋大学社会学部卒業。 大学在学中にデンマークに留学、その後、イギリス滞在中にアサーティブネスに出会う。 大学卒業後、日本社会事業大学研究科で社会福祉士の資格を取得。 1991〜93年、イギリスの地域精神医療団体でソーシャルワーカーとして勤務。 その間、ヨーロッパにおけるアサーティブネスの第一人者、アン・ディクソンのもとでトレーナー養成講座を受け、 アサーティブネス・トレーナーの資格を取得した。帰国後、1999年に国立市に事務所を設立。 2004年にNPO法人化した。現在、アサーティブネス・トレーナーとして、全国各地で講演・研修を行っている。

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